500円で繋がる彼女との関係

 丹下聖。高校2年生の、ただのオタクだ。
 隠された能力があるわけでも、特別人に好かれるタイプでもなければ、得意なことの一つもない極々ありふれたオタク。
 だが彼には、家族にも友人にも言っていない過去があった。
 
 小学校の頃、母親と団地で二人暮らしをしていた時代。
 その団地には、かりんという名の女の子が住んでいた。
 水商売の母親を持つその子は、自分と違って親から鍵も夕飯代も渡されず、早朝になるまで家に入れず、公園で一人佇んでいた。
 似たような境遇の自分が、まだ恵まれていると錯覚してしまうほどに、その子は独りぼっちだった。

 ある日、いつものように母親を待っていたその子を無理矢理公園から連れ出し、夕飯代として母親から渡されていた1000円を分け合って、二人分の夕飯を買った。
 それから毎日夕飯代を分け合って、3年ほど共に過ごしていたのだ。

 かりんと別れて、5年も過ぎた。
 高校2年生になっても、何一つ変わらない平凡な日常を過ごしていたある日、夏休み中に部活の大会で一躍有名人となった後輩に声を掛けられる。
 その子は、かつて夕飯代を分け合った、かりんであった。

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