あなたの『番』は埋葬されました。

道を歩いていたら、いきなり見知らぬ男にぐいっと強く腕を掴まれました。

「ああ、漸く見付けた。愛しい俺の番」

なにやら、どこぞの物語のようなことをのたまっています。正気で言っているのでしょうか?

「はあ? 勘違いではありませんか? 気のせいとか」

そうでなければ――――

「違うっ!? 俺が番を間違うワケがない! 君から漂って来るいい匂いがその証拠だっ!」

男は、わたしの言葉を強く否定します。

「匂い、ですか……それこそ、勘違いでは? ほら、誰かからの移り香という可能性もあります」

否定はしたのですが、男はわたしのことを『番』だと言って聞きません。

「番という素晴らしい存在を感知できない憐れな種族。しかし、俺の番となったからには、そのような憐れさとは無縁だ。これから、たっぷり愛し合おう」

「お断りします」

この男の愛など、わたしは必要としていません。

そう断っても、彼は聞いてくれません。

だから――――実験を、してみることにしました。

一月後。もう一度彼と会うと、彼はわたしのことを『番』だとは認識していないようでした。

「貴様っ、俺の番であることを偽っていたのかっ!?」

そう怒声を上げる彼へ、わたしは告げました。

「あなたの『番』は埋葬されました」、と。

設定はふわっと。

アルファポリスに掲載。

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