兵站将校は休みたい!

「大尉殿は――分遣隊長殿は、戦死されました」

 派遣された部隊に着任したら、隊長は既に戦死していた。

「まずくあります。半方焼けてしまいました」

 集積された輜重品は焼かれ、彼の俸給の3か月分以上が灰になっている。

「クソが、悪魔に喰われろ」

 不十分な記録。
 数字だけ整えられた帳簿。
 前任者のいない引き継ぎ。

「しかし、とは申しましても、当家や領地の備蓄にも限りがございます」

 子爵家の家宰は表情を変えずに言った。
 それでも彼は、ここから必要な物資を調達せねばならない。

「期限は?
 それと、報酬」

 冒険者と交渉し、

「仕事が早いな、新任の隊長殿は」

「小官は代理です、少佐殿」

 他の部隊長に頭を下げ、

『久しぶりだな、レフノール。無事荷が届いたようで何よりだ。息災か?』

 実家を巻き込んで。
 彼は、兵站業務をこなさねばならない。

「できればもう少しのんびりした部署が良かった」

「隊長のような方は、仕事の方で放っておかないと思います」

 休みたい、という彼のささやかな願いが叶う日は、いつ来るのだろうか?

※本作は「カクヨム」様にも並行して投稿・連載しております。

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