聖女は妹ではありません、本物の聖女は、私の方です

著者:光子

 私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。

 特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。

「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」

 傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。

 でも違う、私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けて、私を独り占めしようと、全てを私に似せ、奪い、閉じ込めた。
 冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。

 私は妹が大嫌いだった。
 でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。

「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」

 ――――ずっと我慢してたけど、もう限界。

 好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ?
 今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。

 丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。

 さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。

 泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。

 本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。

不定期更新。
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アルファポリス様でも掲載しています。

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