帰る場所を失った僕、捨て猫と段ボールにいたら大人のお姉さんのヒモになる。

朝、推しのVチューバーが陰謀論に目覚めたことから不幸な一日――若井燕大の16歳を迎えた誕生日は始まった。
バイト先に給料を貰いに向かえば包丁が刺さった店長を発見。
事情聴取で警察署を出てすぐに、憧れの先輩のパパ活現場を目撃。
「とんだ誕生日だ……」と恨み言をこぼしながら帰ったら、なんと住宅街ごとアパートが燃え盛っていた。

帰る家も、連絡手段も、そして身分証明するものすらも失った。
着の身着のまま放り出された令和の高校生は、なにを頼ればいいかもわからず街を徘徊し――その先で、段ボールに捨てられていた子猫と出会った。
手を差し伸べたいと願うも、自分もまた帰る場所を失っている身。
せめて雨から守るように、段ボールの中で子猫を抱えていた燕大のもとへ、ふいに傘が差し出された。
見上げた先に浮かんでいたのは、慈愛に満ちた天使の微笑みのようであり、興味を掻き立てられた小悪魔のようにも映った。
どちらにせよ、

「行く場所がないならうちに来る?」

こんな綺麗な人に拾われるのなら、最悪な一日は終わったのだろう。

そう思った翌日、

「どう、お姉さんのヒモにならない?」

この身を捧げるように首を振ることになるとは、このときの燕大は想像もしていなかった。

※カクヨムのほうにて先行公開中。

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