七年間、一度も読まれなかった。
婚約者に宛てた手紙は、すべて握り潰されていた。 リーゼロッテは王太子の婚約者でありながら、一度も会話を交わしたことがない。 廊下ですれ違っても目を合わせてもらえず、茶会に誘っても断られ続けた。
彼女には誰にも言えない秘密がある。 帝国で話題の魔道具ブランドを、たった一人で作り続けていること。 婚約者に見向きもされない夜、工房にこもって設計図を引くことだけが救いだった。
卒業式の日、王太子は別の令嬢の手を取り、リーゼロッテを「悪役令嬢」と呼んだ。 けれど彼女は泣かなかった。 この日のために、七年間準備してきたのだから。
問題は、隣国の皇帝が彼女の正体に気づいていたこと。 五年前から関心を寄せる男は、国境を越えてでも彼女を手に入れるつもりらしい。
待ち続けた七年と、追い続けた五年。 二つの時間が交わるとき、彼女は何を選ぶのか。


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