聖女の奇跡が止まった日

 聖女の祈りは、いつも人々を救ってきた。
 病は癒え、作物は実り、国は「奇跡」に守られている――そう信じられていた。

 だから誰も気づかなかった。
 奇跡の裏で、帳簿が赤く染まっていたことに。

「支援金が足りません」
「物流が止まります」
「このままでは、来月――」

 私はそれを止めていた。
 数字を合わせ、怒りを引き受け、嫌われ役を演じながら。

 だが、ある日。
 聖女が微笑み、祈ったその瞬間――奇跡は起きなかった。

 人々は混乱し、王は狼狽え、
 聖女は初めて、自分が「万能ではない」ことを知る。

 そして、誰かが呟いた。

「……あの悪役令嬢が、いなくなってからだ」

 私はもう、そこにいない。
 けれど奇跡が止まった理由を、
 国はようやく理解し始めていた。

※「小説家になろう」は株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です
本サービスは株式会社ヒナプロジェクトが提供するものではありません

レビュー