私が欲しかったのは誰かに与えられる幸福ではなかった。
卒業パーティーの夜、王太子に婚約破棄を告げられた。聖女を虐めた悪役令嬢として断罪され、弁明の機会すら与えられないまま社交界から追放される。
身に覚えのない罪。
庇ってくれる者は誰もいない。
けれど私は復讐を選ばなかった。
前世の記憶が蘇ったとき、思い出したのは怒りではなく一つの技術だった。
匿名の情報紙を発行する。
嘘は書かない。
真実を切り取り、読者に届けるだけ。
聖女の美談に隠された矛盾。
断罪を仕組んだ黒幕の存在。
改竄された公式記録。
ペン一本で王国の常識を揺るがす元悪役令嬢のもとに、ある夜、正体不明の協力者が現れる。
彼は私の記事を読み、取引を持ちかけてきた。
情報を渡す代わりに、私の動向を知りたいと。
その瞳の奥に何があるのか、まだ分からない。
真実を届ける者と、真実を隠す者。
この戦いの果てに何が待つのか。


レビュー