予定通りに断罪されなかったのですが。

六年間かけて準備した人生設計が一夜で崩れた。

公爵令嬢ノエルは卒業式の夜に断罪されるはずだった。覚えのない罪で婚約を破棄され追放される未来を見越して貯金し物件を探しレシピを書き溜めた。断罪された後の人生だけが彼女の計画だった。

ところが見知らぬ騎士団長が証拠を並べて冤罪を晴らしてしまう。

断罪は不発。名誉は宙ぶらりん。王子は気まずそうに目を逸らし聖女は涙を拭いて微笑んでいる。誰もノエルに謝らない。誰もノエルを見ていない。

それでも彼女の答えは変わらなかった。

翌朝ノエルは貴族籍を捨てた。誰の許可も取らずに家を出て路地裏の元パン屋の鍵を回した。前世の記憶にだけ残る苦い飲み物を再現してたった一人で店を開く。

客は来ない。金は足りない。そのうえ何者かが街に噂を流し始める。断罪された悪役令嬢が平民の街で商売をしていると。

潰そうとする手は止まらない。噂の次は制度で次は契約で追い詰めてくる。

それでもカウンターに立ち続けるノエルの店に少しずつ人が集まり始める。気難しい洗濯屋の女将。口数の少ない靴職人。そして何故か毎夕店の前を素通りしていく黒い軍服の男。

彼女が淹れる一杯の苦い飲み物はやがて帳簿の数字を動かし誰かの嘘を暴く鍵になる。

けれどノエル自身はまだ気づいていない。自分を関わせまいとする力がどこから来ているのかを。

あの騎士団長がなぜ冤罪を晴らしたのかを。

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