目立ちたくなかった。 ただ静かに三年間を過ごして、誰の物語にも関わらずに卒業したかった。
前世の記憶を持つロゼリアは、自分が乙女ゲームの世界にいることに気づく。 けれど主人公でも悪役令嬢でもない。 どのルートにも名前が出てこない、ただの子爵令嬢。
完璧なモブだった。
だから図書室の管理係に志願した。 棚を整理して、本を正しい場所に戻して、閉館の鍵をかける。 それだけの日々を繰り返すつもりだった。
なのに手が動いてしまう。 散らばった書類を拾い、落ちたハンカチを拾い、壁際で一人きりの令嬢の近くに座ってしまう。
気づけば図書室には、聖女に追い詰められた人たちが集まり始めていた。
ロゼリアがしたのは、日付を並べ、本を棚に置き、情報を整理しただけ。 それは本当に、ただそれだけのことだったのか。
誰の目にも止まらなかったはずの少女が動かした歯車の先に、何が待っているのか。


レビュー