退屈な女だと笑われた夜から私の時間は止まっていた。
婚約破棄され実家にも居場所をなくした伯爵令嬢メルルが送られた先は辺境の荒れた小屋だった。
残されたのは古い柵と草原だけ。
誰にも必要とされない日々がまた始まるのだと思っていた。
けれど辺境の森で見つけた卵が虹色に光ったとき何かが変わり始める。
殻を破って現れた白い幼竜はメルルにだけ懐き関わる者すべてを不思議な力で引き寄せていく。
押しかけてくる村の少女。
意味深に微笑む長老。
そしてこの幼竜を診るためにやってきた竜族の青年はどういうわけか耳の後ろの鱗の色が変わることを隠そうとしている。
幼竜の正体を知る者たちが一人また一人とこの牧場に集まり始める。
王都では元婚約者がメルルの築いたものを奪おうと手を伸ばしてくる。
この子を拾ったのが私でよかったのだろうか。
それとも私がこの子に拾われたのだろうか。
辺境の小さな牧場でしか生まれない絆がメルルの止まった時間を動かしていく。
あの青年の鱗が意味するものをメルルはまだ知らない。


レビュー