助けてと言えない人間は何度でも同じ負け方をする
リーネは知っていた
自分がこれから断罪されることを
王太子に悪女と呼ばれ貴族たちの前で捨てられることを
なぜなら一度それを経験して死んだからだ
二度目の人生で彼女が選んだのは泣くことでも逃げることでもなかった
断罪される前に自分から婚約を解消する
王宮を出て街外れに寺子屋を開く
読み書きを教えて子どもたちと静かに生きていく
それだけでよかった
けれど寺子屋に一人の男が現れる
備品管理係を名乗り黙って棚を整え帳面に数字を書き残していく
名前以外の何も明かさないその男はなぜか子どもたちの顔と名前を全員覚えていた
届けた覚えのない軟膏が備品箱に入っていた
夜の通りを誰かが歩く足音が続いていた
一方で王太子は手放した元婚約者を取り戻そうと動き出し
聖女と呼ばれる少女の涙が再びリーネの前に落ちる
前の人生でリーネを壊したのは敵の悪意ではなかった
誰にも助けを求めなかった自分自身だった
備品管理係の嘘と聖女の涙
どちらが本物かを決めるのは証拠だけだ
けれどリーネにはまだ関を越えていない問いがある
助けてほしいと口にしたら自分は弱くなるのか
それとも


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