チートで救われた世界の歴史が間違いだらけだったので、前世が図書館司書だったから記録を残すことにした

魔王を倒した勇者は伝説になった。
だが、その「伝説」は間違いだらけだった。

勇者がどこで何をしたか、記録がない。魔族との約束も口約束。戦死者の名簿も存在しない。国境線の根拠は「たぶんこの辺」。
──記録がないから、条約の根拠が揺らぐ。領土の境界で争いが起き、戦死者の遺族は補償を受けられず、五年前の真実は日に日に塗り替えられていく。

そこに送り込まれたのは、チートなしの「凡人枠」転生者。前世は県立図書館の郷土資料室で十五年働いた司書。大学院では日本近世史を専攻し、古文書の解読と史料批判に明け暮れた。
剣も魔法も使えない。だが「一次史料の収集」「証言の照合」「記録の体系的な整理」なら、前世で十五年やってきた。

チートで救われた世界には、英雄譚はあっても、歴史がない。
歴史がなければ、戦場で命を懸けた者たちの努力は忘れ去られ、同じ過ちが繰り返される。

必要なのは──地味で、退屈で、誰も褒めてくれない「記録」だった。

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