三年間、夫はわたしに一度も触れなかった。
指先すら。
理由を聞きたかった。
でも「愛していないから」と返されるのが怖くて、聞けなかった。
白い結婚と周囲に嘲られても、黙って暮らした。
聖女に「触れたくないのですよ」と面と向かって言われた日も、夫は何も否定しなかった。
ある冬の日、戦死の報せが届く。
遺品は、革表紙の日記帳が一冊だけだった。
震える手でページを開くと、そこには夫の字で「触れたい」と繰り返し書かれていた。
髪に触れたかった日のこと。
手を握りたかった夜のこと。
三年分の言えなかった言葉が、全部そこにあった。
なぜ触れられなかったのか。
その答えは、日記の最後のページに書かれている。
ただしそれは、夫の筆跡ではなかった。


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