チートの回復魔法は万能ではなかった。
傷は治る。骨も接ぐ。
——だが、子供たちが原因不明の熱を出し、痩せていく症状には、何の効果もなかった。
回復魔法は「壊れたものを元に戻す」魔法であって、「体の中で静かに進む病気」には対処できない。
栄養失調も、感染症も、発達の遅れも——魔法の「敵」ではないから。
そこに送り込まれたのは、チートなしの「凡人枠」転生者。前世は地域の小児科クリニックに十五年勤めた町医者。
剣も魔法も使えない。だが「問診」「触診」「鑑別診断」「感染経路の特定」「予防接種の概念」なら、前世で十五年やってきた。
チートで治せない病気を、チートなしで治す。
必要なのは——地味で、退屈で、誰も褒めてくれない「予防医学」だった。
そして、やってきたのはA級チートの「奇跡の聖女」。
万能の回復魔法を誇る彼女に、チートなしの町医者が突きつける。
——「君、基礎看護学を忘れたのか?」
「——っ、はいッ!」
A級チートの聖女が、反射的に直立不動になった。


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