五年間、私は誰にも知られず国を支えていた。
北部の飢饉も、南部の交易路も、東部の鉱山も。
全て王太子の名前で提出し、全て王太子の功績になった。
婚約破棄の日、私は一度も振り返らなかった。
泣く理由がなかった。恋心など、最初からなかったから。
領地に戻った翌週、王宮の書類棚が空になった。
代わりに書ける人間は、誰もいなかった。
私の元に届いたのは、かつて交渉の場で敵対した隣国の将軍からの手紙。
几帳面な字。的確な指摘。そして追伸に、不器用すぎる一文。
この男は、手紙では饒舌なのに対面では何も言えない。
好意を物資で送り、心配を護衛で示し、名前すら呼べずに言い直す。
国が傾いていく。
捨てた側が気づき始める。
私はもう、誰の裏方でもない。
数字しか信じなかった女が、数字では測れないものに出会う物語。
あの方を手放して国が傾かないと思っているのですか?
小説家になろう
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