噂の悪女は否定しません。ただし本当に怖いのはここからです。

著者:星渡リン

 王都アルヴェインには、“噂の悪女”がいる。

 アシュベリー伯爵令嬢ヴィオレッタ。
 令息を泣かせた、侍女が次々辞めた、逆らう者を社交界から消す。
 そんな物騒な噂で恐れられる彼女には、前世の記憶があった。

 前世で知ったのは、
 人は事実より、先に「信じたい物語」を信じるということ。

 だからヴィオレッタは決めている。
 悪女の噂は、あえて否定しない。

 ある夜会で、侯爵令嬢レオノーラの大切なブローチが消え、なぜかヴィオレッタのドレスの裾から見つかってしまう。
 誰もが彼女を疑う中、ヴィオレッタは潔白を訴えなかった。

 誤解は、解くより利用した方が早いから。

 これは、悪女と呼ばれた令嬢が、
 誤解と噂を逆手に取って王都を生き抜く物語。

 ただし、本当に怖いのは悪女本人ではない。
 誰かを悪役に仕立てることで安心したがる、この王都そのものだ。

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