「お前のような愚鈍な女は要らない。書類を読むだけで一日が終わるような遅い女など」
辺境伯エーリヒは、妻リーゼロッテをそう罵って追い出した。
リーゼロッテが「遅かった」のには理由がある。
領地経営の公文書——法律用語と古語が入り混じる難解な原文を、エーリヒが理解できるよう平易な要約に書き直していたのだ。
税務報告書。外交条約の草案。裁判記録。軍事報告。
エーリヒが「自分で読んでいた」と思っていた書類は、全てリーゼロッテが翻訳した「やさしい版」だった。
翌月、原文だけが積み上がった執務室で、エーリヒは一枚も読めない書類の山に埋もれていた。
「お前のような愚鈍な女は要らない」と追い出した夫が、翌月から領地経営の書類を読めなくなった件
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