「奥様って可哀想ですね」と、夫の愛人に囁かれた日。
セラフィーナは笑った。
涙でも怒りでもなく、声を上げて。
五年間、公爵家の外交を一人で担い続けた。
名前も呼ばれず、功績も認められず、ただ「公爵夫人」として透明に生きてきた。
その自分を「可哀想」と同情されたとき、初めて気づく。
自分の足で立つことを、ずっと後回しにしていたと。
白い結婚の五年条項が満了した朝、セラフィーナは離縁届に判を押した。
完璧な引き継ぎ書を残して、誰にも泣きつかずに、門を出た。
けれど、その「笑い」を三年前から記録していた人物がいた。
外交局の長官、第二王子レオンハルト。
彼が外交局の記録を取り出した時、五年間の仕事が初めてセラフィーナの名前とともに照らされる。
公爵家の外交が静かに崩れていくなか、
セラフィーナは自分の名前で立つ場所を見つけていく。
「可哀想」な自分の物語は、あの笑いと共に終わった。
では、これからはどんな物語になるのか。


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