侯爵令嬢アデル・ローゼンベルクは、王城の夜会で婚約者の王太子と聖女により“悪役令嬢”として断罪される。
けれど彼女は泣き崩れない。取り乱しもしない。
なぜならその中身は、前世で八十五歳まで生き、すべてを忘れ、すべてを人の手に委ね、最後は看取られて死んだ女――櫻井民子だから。
若さも、美貌も、恋も、称賛も。
そんなものはもう、彼女にとって人生の本質ではない。
人が最後に何を失い、誰が残り、誰が綺麗事だけを並べるのか。
それを知っている彼女には、王太子の見せびらかす断罪も、聖女の涙も、あまりに軽かった。
だから彼女は、悪女と呼ばれることすら気にしない。
ただ静かに見抜く。
この人たちに、人は預けられない、と。
これは、絶世の悪役令嬢の姿をした“看取られて死んだ八十五歳”が、薄っぺらい断罪劇を真正面から叩き返す物語。


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