「お前に使った十年を返せ」と言われたので、お返しした結果がこちらです

著者:月雅

十年間、一度も感謝されなかった。

公爵令嬢ミレーユは、王太子の婚約者として誰にも気づかれない仕事を続けてきた。 外交書簡の起草。社交人脈の維持。領地の物資契約の管理。 全ては婚約者の名の下に、当然の義務として消費された。

ある夜会で、王太子は言い放つ。 お前に費やした十年を返せ、と。

ミレーユは微笑んで答えた。 わかりました、と。

翌日から、ミレーユは自分がしてきたことをやめた。 ただそれだけのことだった。

自由になった彼女のもとに届いた、差出人不明の手紙。 辺境の孤児院を立て直してほしいという依頼。 その依頼主は、王宮に姿を見せない病弱な王族だった。

声が小さく、人前が苦手で、けれど子どもたちには慕われている。 王太子とは正反対のその人は、ミレーユに言った。

あの仕事量を、誰にも気づかれずにこなしていた人を、初めて見ました。

十年間、誰の目にも映らなかった仕事。 それを断片から読み取った人が、たった一人だけいた。

ミレーユが手を引いた王都では、何が起きているのか。 辺境で見つけた居場所は、彼女に何をもたらすのか。

五歳で母を亡くしてから、ミレーユは一度も声を上げて泣いたことがない。

※「小説家になろう」は株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です
本サービスは株式会社ヒナプロジェクトが提供するものではありません

レビュー