五年間、この日を待っていた。
コルヴェン侯爵家の長女マレーネは、王太子に婚約破棄を告げられた瞬間、微笑んでこう言った。
「承知しました。では予定通りに」
前世の記憶を持つマレーネには、婚約破棄の日が来ることがわかっていた。だから五年かけて体を鍛え、知識を蓄え、資金を貯めた。王宮を出たその足で、辺境の冒険者ギルドへ向かう。
令嬢が冒険者になるなど前代未聞。だが古代遺跡の文字を読み、千年前の罠を解除し、護衛兵を投げ飛ばすこの女に、周囲は言葉を失った。
辺境で待っていたのは、口数の少ない護衛と、口の悪い弓手と、古代文明が残した謎の遺跡。そして王都から届く、マレーネを呼び戻そうとする不穏な影。
自分の足で立つと決めた令嬢は、差し出された手を取れるのか。
五年分の孤独の先に、何が待っているのか。


レビュー