王太子アルノルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セシリアは、静かに一礼した。
前世の記憶を持つ彼女は知っている。
ここで取り乱せば、悪役令嬢として断罪されて死ぬのだと。
だからこそ彼女は、穏やかに婚約破棄を受け入れる。
ただし、婚約者として当然のように続けてきた“王家への立て替え”を、すべて止めることにした。
王太子府の不足金。
王都結界の補修費。
見栄のための贈答と宴席。
それらを埋めていたのは、セシリアの持参金と公爵家の信用だった。
「婚約が解消された以上、もう私が穴埋めする義理はありませんので」
翌朝、止まったのは彼女ではなく、王太子のほうだった。
静かな令嬢が帳簿で断罪する、異世界恋愛短編です。


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