お詫び状が、また一通届いた。
これで二十四通目。
アデライドは、もう数えるのをやめたかった。
伯爵令嬢である彼女には、婚約者がいる。
けれど観劇の約束は妹に奪われ、同伴の席も妹に譲られてきた。
そのたびに届くのは、誠意の薄れていくお詫びの手紙だった。
六年。
家のために、彼女はずっと待つ側でいた。
ある日、弟の叙任が決まる。
家督の見通しがつき、彼女はようやく気づく。
もう、自分が我慢する理由はないのだと。
アデライドは声を荒らげない。
ただ、慣例どおりに振る舞うことを選ぶ。
席次、贈答、返礼、茶会の沈黙。
礼法だけを使って、彼女は静かに動きはじめる。
そして、ずっと彼女を見ていた人がいた。
踏み込まず、ただ見守っていた侯爵が、ひとり。
数えることは、屈辱なのか。
それとも、彼女がようやく手にした、自分の人生の証なのか。


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