「放っておけないんだ」と仰るあなたを、私は放っておきます

四年で五回。
それが、わたくしが婚約者の隣に座れた回数。
王宮の茶会を整え、贈答を整え、夜会の席次を整えてきた侯爵令嬢ジゼル。
その隣の席は、いつも幼なじみのご令嬢に譲られていた。
「放っておけないんだ、彼女のことは」。
そう繰り返す婚約者の言葉に、わたくしは四年、頷き続けた。
けれど、婚約四周年の記念夜会。
三度目の同じお願いを聞いたとき、足が動かなくなった。
「では、わたくしも、放っておきますね」。
それは誰にも届かない呟き。
ただ、わたくし自身に届いた、四年で最初の言葉だった。
降りる、と決めた翌朝。
王妃陛下は、たった一言で受理してくださった。
そして、隣国の王弟殿下が、王宮の回廊で従者に告げる。
「あの方の通り道を、空けるように」。
二年前から、あの方は何をご覧になっていたのか。
整え手としてではない、わたくしを、誰が見ていたのか。

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