夜会の受付嬢は見た。いや、見ていない。

著者:Vou

夜会の受付嬢リネットの仕事は、来客の入退場を台帳に記録すること。

その夜、王太子の婚約者オフィーリア侯爵令嬢が、義妹を階段から突き落とし、さらに隣国使節と密会したとして断罪された。

けれど、リネットの台帳には残っていなかった。

オフィーリアが会場を出た記録が。

外套の返却記録もない。
馬車の呼び出し記録もない。
退場記録もない。

一方、事件直前に白銀の外套を受け取って外へ出たのは、義妹ロザリーの方だった。

その夜、王太子はリネットに命じる。

「オフィーリアが退場したと書け」

リネットは頷いた。
そして、正確に記録した。

翌朝の裁定で、勝ち誇る王太子の前で、受付嬢は台帳を読み上げる。

受付嬢など、誰も見ていない。
けれど受付嬢は、記録だけは間違えない。

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