娘の薬帳を捨てた夫へ。あなたが愛した“病弱な幼馴染”には、もう私の薬は届きません

著者:Sophia Rose

侯爵夫人セレーネは、熱を出しやすい幼い娘ミーナのため、何年も薬草の調合記録を書き続けてきた。
けれど夫ギルベルトは、病弱な幼馴染リリアばかりを優先し、ついには娘の療養室まで明け渡すよう命じる。
「リリアの命がかかっているんだ。君なら分かってくれるだろう」
そう言って夫が暖炉へ投げ込んだのは、セレーネが娘の命を守るために書き続けた薬帳だった。
セレーネは泣かなかった。
燃え残った頁を拾い、娘を抱いて、静かに屋敷を出る。
夫は知らなかった。
その薬帳こそが、王都の子どもたちを救ってきた解熱薬の原本であり、侯爵家ではなくセレーネ個人の名義で王宮薬務局と契約されていたことを。
セレーネが去った翌月、王都に解熱薬は届かなくなる。
そして夫はようやく知る。
自分が捨てたのは古い帳面ではなく、妻が守り続けてきた命の記録だったのだと。

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