「静謐園(セレニア)に春は訪れない」
元騎士のアストリッドは名前を奪われ、番号として管理される灰色の監獄で心を殺して生きていた。
収監から五年目、ひとりの女がやってくる。国家反逆の罪を着せられた公爵令嬢コルデリア。
絶望に支配された檻の中で、彼女は静かに囚人たちへ語りかける。
世間からは「悪」として断罪されたはずのその令嬢は、なぜか塀の外に聖女や王太子といった強力な味方を持っていた。
そして彼女自身も不思議なほど洗練された話術で、心を閉ざした囚人たちから次々と失われた名前と記憶を引き出していく。
彼女の強かさに巻き込まれる形で、アストリッドは共に声と記憶を聴き集め、見えない糸を編み上げていく。
すべてを奪われた底辺の監獄から、声と尊厳を取り戻す、静かな戦いの記録。


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