王国のため。
第一王子レオニールは、婚約者エレノアを捨て、隣国の王女を王妃に選んだ。
それが最善だと信じていた。
十年後。
賢王と呼ばれるようになった彼は、視察先の地方領で元婚約者と再会する。
そこにいたのは、五人の子供に振り回され、町中の世話を焼きながら、騒がしく笑って生きる彼女だった。
かつて王宮で見せていた、静かで慎ましい令嬢の姿は、どこにもない。
静かな王城。
騒がしい町。
完璧な王妃。
笑い声の絶えない家庭。
失って初めて、王は知っていく。
自分は一度も、
“彼女自身”を知ろうとしていなかったのだと。


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