王太子ヴェルナルドから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ルディアは、静かに胸元の鍵に手を添えた。
ルディアの一族は七十年もの間、王家に「幸運」を貸していた。雨が一日だけ遅れる。商談相手が席を立たずに済む。毒杯を、偶然手に取らない。さらに、聖女と呼ばれていた妹の祈りも、王家の祝福も、すべてルディアの貸与記録の上に成り立っていた。
その小さな積み重ねを、王家は自分たちの実力だと思い込んでいた。
「承知しました。では本日をもって、王家への幸運貸与契約を終了いたします」
翌朝から、王宮のすべてが少しずつ噛み合わなくなる。これは呪いではない。ただ、貸していたものを返してもらうだけの話。


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