「僕たちは政略結婚なんだ。僕が誰と親しくしようと、君には関係ないだろう?」
伯爵令嬢エレノアの婚約者ヴィクトルは、そう言って自分の交友関係への干渉を拒んだ。
けれどその一方で、エレノアには「妻になるのだから」と、夜会で自分の顔を立てることや、結婚後に屋敷を管理することを当然のように求めてくる。
自分には自由をエレノアには妻としての義務を。
その矛盾を指摘しても、ヴィクトルの答えはいつも同じだった。
「政略結婚なんだから、割り切ればいい」
ならば、本当に割り切ってしまえばいい。
二人の婚約が結ばれた目的は、両家の街道利用や交易、港の使用権を安定させるため。
それなら――結婚せずとも、政略だけを別の形で残せるのではないか。
そう考えたエレノアは、両家の利益を守るための新たな協定を整えたうえで、ヴィクトルへ婚約解消を告げる。
「私たちの間に必要なのは、愛ではなく”政略”だけなのでしょう?」


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