三度申し上げました。誰も聞きませんでした

著者:紬 律

 婚約者を義妹に奪われたとき、テレーゼは怒らなかった。

 怒る理由がなかった。彼女は三つのことを知っていたからだ。

 フェルディン伯爵家に金がないこと。あの人に二歳の子がいること。あの家の小切手を、もうどこの銀行も受け取らないこと。

 三月十四日、テレーゼは同じ日に三人へ、同じ三つを順に伝えた。

 義妹に。継母に。父に。

 義妹は微笑んで、こう言った。

「そういうことを言うのは、みっともないと思う」

 継母は二つめの途中で席を立った。父は「女同士のことだ」と言った。

 テレーゼはその夜、伝えた内容を書面にして、公証人に預けた。

 書かなければ、なかったことになるからだ。

 ――四か月後、義妹が部屋に駆け込んでくる。

 お姉様、助けて、と言いながら。

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