元・傾国の美女とフラグクラッシャー王太子

 公爵令嬢のアザレアには前世の記憶があった。それは時の皇帝を惑わし、国を混乱させた原因として処刑される記憶だった。悪女と罵られ一族郎党皆殺しにされたとき、彼女はもう二度と権力者とは関わらないと決め、この世を去ったのだ。しかし、何の因果か今世でアザレアは王太子ロータスの婚約者となってしまった。前世は美しさだけが取り柄だった。今世ではその取り柄すら無い。
「きっと無能な私よりも殿下にふさわしい人が現れるはず。その時は身を引くべきだ」と、前世のせいで自信を失ったアザレアはそう考えていた。
 しかし、彼女は気づいていなかった。
「殿下ァ! 散歩感覚で敵国の皇帝と仲良くなってくるのはやめてください!! 両陛下の心臓が止まりかけましたのよ!?」
「殿下ァ! 修行感覚で魔王を倒してくるのやめてください!! ほらぁ! 勇者殿が泣いちゃったではありませんか!!」
「殿下ァ! 好奇心で精霊の国に行かないでください! 皆心配しております! 早く帰って……え? 帰り方がわからなくなった? もおおおおお! 急いで迎えに行きます! そこで大人しく待っていてください!!」
 ハイスペックすぎるロータスに唯一対応できるのは、同じくハイスペックなアザレアしかいないと。
 これは、ネガティブな一級フラグ建築士アザレアと、ポジティブなフラグクラッシャーロータスが、くっつくまでのお話。
○小説家になろう様でも投稿しております。

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