悪役令嬢になってみたい普通の公爵令嬢の日記

著者:たなか

〇月〇日

今日も王子に近寄ろうとする分を弁えない男爵令嬢を呼び出して、

二度と間違いを繰り返さないよう徹底的に脅して差し上げました。

青ざめて小動物のようにプルプルと震えて怯えていましたが、いい気味です。

邪魔な芽は小さな内からきちんと摘んでおかなければ。

〇月〇日

今日はあの愚かな子爵令嬢の飲み物に唐辛子の粉末を入れて差し上げました。

王子の目の前で噴き出して顔を真っ赤にして涙目になっていました。

淑女とは思えない、あまりにもはしたない姿に思わず私も大笑いして

紅茶を溢してしまうところでした。

〇月〇日

男爵令嬢が、いつまでたっても王子に色目を使うものですから

寛容な私もとうとう我慢できなくなって階段から突き落とし…

…さすがに突き落とすのはやりすぎですわね…

「突き落としてしまいますわよ」と言って脅して差し上げました。

…やはり本物の悪役令嬢なら容赦なく突き落とすのかしら…

万が一相手の方に怪我でも負わせてしまったらどう責任をとるのでしょう…

まだまだ真の悪役令嬢への道は険しいわ…

〇月〇日

…はあ…なぜ私の周りにいらっしゃる貴族令嬢の皆様方は、

溢れんばかりの魅力を持ちながら常識と節度を備えた素敵な方ばかりなのかしら。

王子に近寄ろうとなさる方も、声をかける方すらもありませんし。

一度親友のルイズ様に「なぜルイズ様は王子を誘惑なさらないのですか?」

とお尋ねしたら「イザベラ様は何を言っているの?」と尋ね返されました。

やはり当分の間は日記を書いて悪役令嬢成分を補給するしかなさそうですわ。

実名を書いてしまうと、現実の善良で親切で全く無害なその方のお姿が

頭をよぎってしまうのでやはり匿名で書くしかないですわね。

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