聖女は死んだ。

「さあアイリーン様、御髪を整えましょうね」

そう言ってマナは自らの主の髪へ丁寧に櫛を入れる。あんなにも輝いていたブロンドは今はくすんだ光を放つばかりになり、所々白髪も混じっていた。社交の華と謳われた容姿も淑女の鑑と慕われた教養も、今は見る影もなくなった。鈴のような声だって不明瞭な言葉を発するばかりとなった。それもこれもあの日の出来事のせいだ。大人の体を持ちながら、中身はまっさらな子供のようになってしまった主人の世話を、それでもマナは毎日焼き続けていた。これは心を壊した令嬢とそれ見守ることしかできなかった侍女の哀しい物語。

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