「おっきくなったら……わたしをおよめさんにしてください」
一人の少年に結婚の約束をした幼き少女は、彼の頬にキスをして彼の前から去っていった。
彼の名前は【桐生 英雄】
英雄……ヒーローという名の通り、正義感に溢れる少年――だった。
彼は山奥の田舎で弱きを助ける少年だったが、家庭の事情で都会に転校してからその性格を疎まれ、いじめられるようになった。
日を追うごとにいじめはエスカレートするが、それでも彼は耐えた。いつかはこの地獄は終わるだろうと信じて――
身も心もボロボロにされながら月日は経ち、結婚の約束をした日から約十年後。中学の卒業式に、英雄は一人の女子に仲良くしてほしいと言われた。
一人ぼっちで疲弊しきっていた英雄は、彼女の要求に応えてしまった。
手始めに春休みに一緒に遊びに行ったのだが、そこで何故かいじめっ子の不良に見つかり、ボコボコにされてしまった。
――あんなタイミングで会うなんて。きっと彼女と不良が手を組んで俺をはめたんだ。
絶望に打ちひしがれる中、誰もいない家に帰ると、ふと台所に置いてあった包丁を取り出す。
――これで死ねば楽になれる。
そんな彼を止めるように、家のインターホンが鳴り響く。あまりにもしつこく鳴るので仕方なく出ると、そこには天使と見間違えてしまいそうな、銀髪の美少女が立っていた。
「えっと……ヒデくん、久しぶり……」
彼女は何と、英雄に結婚の約束をした幼馴染の【神宮寺 日和】だった。
これは心身共にズタボロになった英雄が、日和と時に楽しく、時にいちゃつきながら学校生活を送る中で周りに認められ、救われていく物語。
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