ゴリラ王子と子豚令嬢

著者:たなか

 私の婚約者であるアラン様は、この王国の第一王子です。しかし、初めて彼の姿を目にした人の多くは、高貴なる血筋の持ち主だと気づきません。

 彫りの深い顔に濃いゲジゲジ眉毛。分厚い唇に野太い声。褐色の鎧を身に付けているかのように発達した筋肉とモジャモジャの剛毛に覆われた全身。

 叩き上げの近衛兵長や、身なりのいいゴロツキや、服を着た体毛が薄めのゴリラによく勘違いされて困っているとご本人も仰っていました。

 彼の愛称は『ゴリラ王子』。

 驚くべきことに陰口などではなく面と向かってそう呼ばれているのです。本来なら不敬罪で処分されてもおかしくない暴言だと思うのですが、アラン様ご自身が「親しみやすくていいな!」と笑って容認なさっているのですからどうしようもありません。

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