隠居聖女の三食もふもふ付きブックカフェ生活 ~森で出会った狼は呪いをかけられた王子様でした~

「枯れた聖女にもう用はない。この金を持ってどこにでも消えるがいい」
 王国の聖女ソニアは21歳を迎えた誕生会にて、第二王子シグムントより婚約破棄を言い渡された。
 あまつさえ王子は新しい聖女モイラとの婚約を宣言し、ソニアを同棲先の離宮から追い出した。

 後に残ったのは莫大な手切れ金と、年齢により力の大半を失った我が身一つだけ。
 聖女としての人生しか知らなかった彼女は途方に暮れた。

 ところが失意のソニアは森で一匹の狼と出会った。それは出奔したと思われていた、第一王子ジークが呪いを受けた姿だ。
 似た境遇にあった二人は否応なく惹かれ合い、二人は新しい町でブックカフェを開く約束をした。

 ちなみに――ソニアの中で枯れていたのは精神だけで、聖女の力は最初から失われてなどいなかった。
 一方でソニアが力を取り戻してゆくにつれ、新聖女モイラの力が急激に衰えていったが、それは二人にはなんの関係もない話だ。

 これは月のない夜だけ人間に戻れる元王子と、笑い方を忘れてしまった元聖女の物語。

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