「お姉様はずるい!」と事あるごとに姉を糾弾する出涸らし令嬢の妹と、「お姉様はずるい!」と事あるごとに糾弾される姉の話

「お姉様はずるいですわ!」

私――公爵令嬢アニエス・ウィスタリアは、姉であるリディア・ウィスタリアに大変怒っていた。何しろこの姉がずるいのだ。《ウィスタリアの薔薇》と称される美貌と、その男勝りの勇猛さと完全無欠の紳士ぶりで知られる女騎士リディアは、その圧倒的イケメンオーラを振りまき、妹である私を常に過保護に庇い護ろうとする。そして子供扱いするなと私が地団駄踏んで抗議するたびに、その悪逆的なまでのイケメンオーラで私の口から反論の口を奪い去ってしまう。

いつかこの完璧でずるい姉に吠え面をかかせてやる――虎視眈々とその機会を狙っている私にも、実は想い人が居た。幼馴染であり、姉のリディアに負けず劣らずの美貌で知られるファリオン王子。だが私は姉と違い、「ウィスタリアのじゃない方」と呼ばれる、地味で無才な出涸らし令嬢。そんな私が彼と釣り合うわけがない上、ファリオン王子は姉のリディアを幼い頃から見初めている。

私は何度も身を退こうとするのだけれど、遂にある日、些細なことからずるい姉への嫉妬とファリオン王子への思いが暴発してしまった私は、思わず王子に辛辣な言葉を浴びせかけて思いの丈をぶつけてしまい――。

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