悪役令嬢が追放された山の中で狩猟をエンジョイしていたところ、革命によって追放された元婚約者のヘッポコ王子が転がり込んできた話

「アレクサンドラ・ロナガン公爵令嬢! 君との婚約を破棄させてもらう!」

かつて婚約者であったアイナル王子にそう断罪され、北の豪雪地帯に追放された公爵令嬢アレクサンドラ・ロナガンは、実は妾腹で、十歳で公爵家に召し出されるまではバリバリの山育ち。幸運なことに生まれ育った北の山に「追放」という名目で戻ることができて二年。名うての猟師だった祖父から叩き込まれた狩猟の知恵と技術を使い、今日も元気に獲物を追いかけていた日のことだった。自分を裏切り、ここに追放したはずの元婚約者・アイナルが彼女の目の前に現れる。

アレクサンドラは知っていた。アイナル王子は「真実の愛」を教えてくれたはずの伯爵令嬢家に裏切られ、国を乗っ取られてしまったことを。頭も性格も悪く、処刑する価値もないと判断されたヘッポコ王子は着の身着のままでここ北の原野に追放され、死ぬ覚悟も定まらずに冬になるまで彷徨っていたのだ。

過去に自分がした仕打ちも忘れ、アレクサンドラに「助けてくれ」と懇願してくるアイナル王子。無論アレクサンドラは助ける気などなかったが、あまりにしつこい王子の態度に「自分の食い扶持は自分で稼ぐ」「命令には絶対従う」ことを条件に渋々了承する。

だがアイナル元王子は理解していなかった。この冬山では「自分の食い扶持を自分で稼ぐ」ことが如何なる意味を持つことなのか。そしてこの山では、アイナルのような弱い人間は生存そのものが許されないという事実を。

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