父が生死不明のため、婚約破棄されました。今さら銀行とグルだなんて許さないと言われても困ります

著者:秋月 忍

 薬師見習の子爵令嬢ルシール・ラムルは、夜会で別の女性と踊る婚約者を諦めの目でみていた。
「君はもっと怒ってもいいと思うんだがな」
 公爵家子息にして、ハプセント銀行の頭取、エドワルド・ハプセントはルシールに告げる。
 ルシールは子爵家の後妻の娘で、貴族の血を半分、ひいていない。
 そのこともあって、ルシール・ラムルは、婚約者を金で買ったと噂され、婚約者の伯爵家子息フィリップ・ダイナーからぞんざいに扱われている。

「フィリップさま、あそこにいらっしゃるのは、薬の香りのするお嬢さんではありませんの?」
「ふん。相変わらずかわいげのない女だ。金の力で、今度はハプセントさまに取り入ろうとしているのか?」
 婚約者と、その連れに、嘲りを受けるルシール。
 あたかもルシールが望んだかのように。
 しかし。現実は、ラムル家の資産を狙ったダイナー家から打診された結婚だ。
 子爵家であるラムル家は伯爵家からの正式な申し込みでは、断りようがない。婚約破棄には多額の違約金が必要となる。
 嫌われていて、慕ってもいないのに、大金を払わねば解消できぬいびつな関係。
 
 ルシールの父は娘のため、一攫千金を得ようと、海を越えてバンディ帝国に商談に出かけたのだが、その帰りの船が嵐にあったという連絡を、ルシールと兄は、ハプセント銀行の頭取、エドワルド・ハプセントからうける。
 ハプセント銀行によれば、父が出航に当たってかき集めた五千万ゴールドを三か月後には返済せねばならない。
 年間の収入よりもはるかに多い金額を三か月で用意など、かんたんにできるわけもない。とてもではないが、望まぬ結婚などする余裕はないと考えたルシールは、婚姻にまつわる書類をみせ、エドワルドに相談をする。

※この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。©秋月忍(2021/8/27) 

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