ビビリ・ひ弱・童貞と三拍子そろった小市民の俺ですが「幸運」スキルで裏ギルドの「期待のホープ」になれました。 ~ って、違う、そうじゃない! 俺は平和に暮らしたいだけなんだ……!

著者:三上康明

俺の名前はダフニア……その筋じゃ「からくり血煙殺すニア」なんていう、頭のネジが数本外れてそうな「二つ名」で、有名になってしまった哀れな男だ。

15歳で成人した俺に天が与えたスキルはレア中のレア、「幸運」だった。
これさえあれば農村から大都会に出て行ってもなんとかなるよね、と思っていたら、気づけば兄に借金をなすりつけられ、食うに困って盗みに手を出したらそれが裏ギルド(つまるところチンピラの集まり)の息が掛かった店で、ヤバイやつらに捕まって、これは死ぬ、と思っていたらあれよあれよという間に下っ端構成員になっていた。
これが王都か。魔術と科学の渦巻くまさに魔都だわ。

じゃねーよ!「幸運」スキル、仕事しろよ!

「お前に与える最初の仕事だ」

ゴリラ男(誠に残念ながらこれが俺の上司だ)から手渡されたのは魔導爆薬「ダイナマイト」。火薬と魔術の相乗効果でクソほど殺傷力が上がっている代物だ。

「敵対してるギルドのボスにな、ちょいとぶち込んで来いや」

やらなかったらお前の口にぶち込むことになるからな、とゴリラ男ににっこり微笑まれれば、やるしかないってことになるでしょう?

「幸運」スキル、仕事しろよォ!?

さすがに人殺しは無理。ダイナマイトなんて捨てて、俺の身分も捨てて、王都も捨てて、田舎に帰ってやり直そう……とビルの屋上で決意した。見納めになる王都夏祭りの花火をひとりで見物していたら、落ちてきた燃えかすはダイナマイトに引火。
大急ぎでダイナマイトを上空にぶん投げたら飛んできたコウモリの大群がダイナマイトを持ち去って向かいのビルへ。その屋上で大爆発すると、コウモリの血の雨を降らせた。
折しもそこでは美女を侍らせた男が豪遊中(なんと麻薬パーティー。こちとら鉄砲玉に身をやつして世をはかなんでいたというのに!)。阿鼻叫喚の大騒ぎの中、男の手から放り出された麻薬が地上の通りにいた近衛騎士隊の手に落ちて、突入してきた騎士隊によって男はご用になった。

そう、この男こそ、俺の所属する裏ギルドを執拗に追っていた王都治安本部のお偉いさんだった。

敵対組織の組長を殺すよりもはるかに大きい功績だと褒められ、俺は裏ギルド内で出世したのである。

「幸運」スキル……そういう仕事は、俺、求めてなかったよ……。

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