とある聖女の受難

著者:斯波

「ニーナ=ベネット。お前は聖女の身分を偽り教会入りしただけでは飽き足らず、陛下や我が弟をたぶらかしたとして国外追放を言い渡す!」
第一王子は胸を張って堂々と言い張る。だが身分を偽ったという証拠もなければ、陛下達を誑かしたという証拠もない。二人に確認すら取っておらず、今回の件は第一王子の独断で動いたようだ。国の宝である聖女を国外追放しようというのに、証拠もなしとは呆れて声も出ない。ニーナが能力を公にしていないのには理由があり、事情を知っている宰相は静観を決め込んでいる。だが宰相に裏切られるとは考えづらい。考えられるのはこれを利用した第一王子の切り捨てである。

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