古流の若き剣士、鳴守靂(なるかみれき)が生まれ変わったのは、遠く未来の世界だった。
そこは彼が死んでから約500年後の未来であり、大規模な変動や戦争を経験したせいで、人々の生活も大きく変化していた。
技術力も彼が生きていた時代のそれとは比べ物にならないほど発展していたが、それと引き換えに多くの文化や伝統が失われてしまっていた。
料理、芸能、音楽、概念、歴史的建築物、伝統行事……。
当然、日本古来の剣術も失われて久しく、武士や刀、そんな言葉でさえも、すでにネットワークの奥底からも失われつつあった。
それまで打ち込んでいたものがなくなった世界で、熱意を失っていたレキは、今世の妹からとあるゲームのプレイを勧められる。
ゲームの名前は『Swordsman’s HEAVEN(ソードマンズヘヴン)』。メガフロート『淤能碁呂島(おのごろじま)』を舞台に展開される、AR技術を用いたチャンバラゲームだった。
レキは妹に勧められるがままに、そのゲームに参加するのだが……
文化や伝統のほとんどが失われ、いまや日本を感じさせるものと言えば名前や地名、言葉しかなくなった『未来の日本』。
未来の新たな知的生命体である、知能爆発を得た人工知能『AI知性体』の存在。
メガフロートを舞台に展開される大規模対戦格闘型ARゲーム『Swordsman’s HEAVEN』。
AI知性体と人間の共存や対立を巡る『数々の思惑』。
――剣士は剣を抜いたその場所こそが、死に場所の定めどころと心得よ。
剣士鳴守靂は、失われた己の熱意を取り戻すべく、ゲームの舞台である淤能碁呂島に降り立つ。
人間とAIとを巡る数多くの思惑に巻き込まれることも知らずに……
※作中に登場するほとんどの剣術、剣技は、なんちゃって剣術です。誇張した表現が多々ありますので、本文で書かれていることは鵜呑みにしないでください。
※登場する未来技術もガバガバです。科学の力ってスゲー的に生暖かく眺めてください。
レビュー