働きたくない。
それは誰しもが、一度は抱いたことのある想いだと思う。
俺、鹿島裕司がそのことを考えたのは、幼稚園の頃のことだった。
「ユウくん、なにしてるの?」
そんなことを考えていた俺の顔を覗き込んでくるのは、幼馴染の木ノ下観月だった。
同い年の中でも飛び抜けて整った容姿の持ち主で、何故か俺によく構ってくるやつだ。
そんな彼女を見て、俺の頭に悪魔的発想が浮かんでくる。
「あのさ、俺、働きたくないんだ」
「働きたく…?」
「うん、絶対働きたくない。働くなんて絶対にごめんだ。だからさ、観月に俺の代わりに働いて欲しいんだよね」
「私が?ユウくんの代わりに?」
「そう。そして生涯俺のことを養って貰いたいんだけど」
ダメかな?そう問いかける俺の言動は、子供ながらに間違いなくクズのものであっただろう。
普通なら決して頷かれるはずのない一生寄生宣言。
だが、観月はこれを受けて一瞬キョトンとした表情を浮かべ、
「うん、わかった!私が一生、ユウくんのことを養ってあげるね!」
すぐに満面の笑みで、そう答えてくれたのだった。
そしてあの約束の日から十年。
俺は普通の高校生になり、観月はアイドルになっていた。
俺のことを、生涯養ってくれるためになぁっ!!!
レビュー