「テレーゼ様、お覚悟はよろしいですか」
「……はい」
死刑執行人のアルバンさんが、女性かと見紛うほどのお美しい顔で私を見下ろしている。
後ろ手に縛られている私は、アルバンさんにそっと首を差し出した。
大丈夫、全然怖くない。
この人なら、痛みを感じる間もなく私の命を絶ってくれると知っているから。
「では、参ります」
アルバンさんが聖剣ニャッポリートを、天高く掲げる。
「――あなた様に、魂の救済があらんことを」
ヒュンという風を斬る音と共に、私の意識は途絶えた。
「テレーゼ、ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」
「――!」
目を開けるとそこは華やかな夜会の最中。
私の婚約者であり、我が国の王太子殿下でもあらせられるヨーゼフ様が、ドヤ顔で私に指を差しながらそう宣言した。
……ああ、また戻ってきちゃったか。
これでもう何回目かしら。
10回を超えたあたりからは、数えるのも億劫になっちゃった。
――何故か私は死ぬたびに、この場面まで時間が戻ってしまう。
何とかこの状況を打開しようと、あの手この手を尽くしてるんだけど、不思議と結果は毎回断罪エンド……。
一応私なりに頑張ってるつもりなんだけどなぁ……。
まあ、落ち込んでても始まらないわ!
今回こそは、断罪エンドを回避してみせるわよ!
レビュー