最後のダンスは雨上がりの中で

華やかなダンスホールを彩るような、優雅で、しかしリズミカルな演奏が響き渡る。一曲目はスローワルツ。社交ダンスの中では比較的ゆったりとしたテンポで、体を慣らす意味でも私は好きだった。

 一方でパートナーの婚約者様は、その顔面を蒼白とさせているが。

 私は手汗で冷え切ったパートナーの手を握り直し、周囲に聞こえないようにそっと、しかしパートナーには確実に聞こえる距離で呟いた。

「ウィリアム様のお望み通りにして差し上げます」

「な……なんの、ことだ?」

 今度は体を寄せ、吐息が耳に触れる近さで。

「婚約を、破棄なさりたいのでしょう?」

 決着を付けるわ、この未練に。

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