<ステータス・クローズ>

「お嬢様、婚約者殿がいらっしゃいました」

「そう、お通しして」

 いつからだろう。私達の世界で、魔法が生活必需となったのは。

「ジュネ!会いたかったですよ!」

「ご無沙汰しております、ハンク様。お元気でしたか?」

「ええ!君は……<アナライズ>!」

 いつからだろう。相手の体調を調べるのに、魔法で診察するのが当たり前になったのは。

「ふむふむ。あれ、少しHPが減っていますね。何かありましたか?」

「……ちょっとお腹が痛いだけです」

 いつからだろう――

「君はHPが30しかないのですから、気を付けないと。ほら、この携帯ポーションで回復してください」

 ――ステータスの数字だけで、人が人を測るようになったのは。

「……魔法もステータスも、この世から無くなればいいのに」

 その日もいつも通り、漠然とした不安と不満を抱いたまま、眠りにつくはずだった。

「え?え!?う、うわ!?」

 ドサリという音とともに、少年の悲鳴が聞こえさえしなければ。

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