孤児だったラースは子供の時に大怪我をした。
死を人一倍怖がるようなった代わりに、命を救ってくれたヒールの修行に励んだ。
治すべき人や家畜がいなくなっても、木や岩を相手にヒールを練習した。
しかし天職が【無職】だったラースは、どれだけ練習しても最下級ヒールしか使えず、そのヒールすら対象に触っていないと発動しなかった。パーティーメンバーにヒールを飛ばせないので回復士(ヒーラー)ですらなく、冒険者になれない。
また剣術や魔術、狩猟や農作業なども覚えられない。
ついには17歳になると、中級治癒師の帰村とともに役立たずとして村を追い出されてしまう。
ラースは生きられる場所を探して街に出た。
すると貧しい村と違って、街では様々なものがゴミとして捨てられていた。
――あれ? 折れた剣や壊れた防具、壊れたアクセサリーをヒールで直して売れば儲かるんじゃ……?
そのことに気が付いたラースはあちこちでゴミを拾っては新品同様に直して売った。
なぜか拾った物が『偶然』高級品ばかりだったので、ぼろ儲けした。
――しかしラースは、気が付いていなかった。
彼が直すと武器や防具に【攻撃速度上昇:大】や【火抵抗:極大】など、優秀なユニークスキルが付いた。
周りからはあり得ない魔法だとしてドン引きされるも、拾ったゴミがたまたま高級だったと勘違いし続ける。
そして自分の店を持っては繁盛させて、街の危機に対してはヒール一つで英雄となっていくのだった。
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