【短編】邪神が死んだ世界に勇者は用済みだと言って追放されました

著者:兵器っ

「邪神を討伐した今、邪神をも超える勇者という存在は、民にとって新たなる恐怖を生み出すだけ。よって勇者アルスをこの世界から追放する!」

 邪神討伐後、王都に帰還したアルスに待ち受けていたのは、アルスを異世界に追放するというふざけた宣告だった。
 邪神を倒した勇者が、国王以上の権力と名声を持つことを嫌悪したからだ。

「確かに邪神は倒しましたが、あれは時間を経て復活する存在です。私を追放すれば、その時に対処できる人間がいなくなりますよ」
「ぬかせ! 邪神の討伐から復活までは、最低でも200年以上かかるという記録が残っている! 無駄な足掻きは止めろ!」

 アルスの訴えもむなしく、王国に伝わる世界間転移魔法によって、アルスは異世界に追放されてしまうことになる。
 だが、それでアルスが絶望することはなかった。

「これまではずっと勇者として戦い続けてきた。これからはこの世界で、ゆったりと余生を過ごすことにしよう!」

 スローライフを満喫することにしたアルス。
 その後、アルスは地球と呼ばれるその世界に住む少女とともに、何一つとして不自由のない幸せな日々を送ることになった。

 一方、王国では未曽有の事態が発生していた。
 神聖力と呼ばれる、邪悪な存在を消滅させる力を有している勇者がいなくなったことにより、世界のバランスは乱れ、一か月も経たないうちに新たな邪神が生まれようとしていた。
 世界は滅亡への道を歩み始めるのだった。

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